国の発展は腐敗や不正によって妨げられてしまう事を歴史と世論は示している。1990 年代に旧ソ連が崩壊してか らモンゴルは経済的には成長した。しかし、せっかくの富もビジネスにおける不正や個人生活における非道徳的行い といった腐敗によって吸い上げられてしまっている。社会の価値観に変化が生じなければならない。そうでなければ 発展途上国のように、モンゴル社会の富は増加していく腐敗や犯罪やアルコールや暴力によって失われていくことに なるだろう。実際に国民の多くは道徳性やモラル向上の必要性を切実に感じている。モンゴルの教育省は特に若い世 代への道徳教育の必要性を感じて、学校教育の指導要綱にこれを取り入れている。ところが教材が乏しく、学校の先 生は任せられている子どもたちに対して十分な道徳教育を実施できないままでいる。

　1990 年に旧ソビエトが撤退してから最初にモンゴルでの福音宣教や開拓を組織として行ってきたのがアジア・ア ウトリーチである。この地は72 年も福音に閉ざされていた。教会もなく聖書もなく信仰良書さえなかった。何もな かったころから時代は大きく変わり、今では500 のキリスト教会に90,000 名の信徒がいる。AO モンゴル・ジェ ネシスのGCI（宣教命令学院）を通して、国内の85% にあたる働き人が聖書的訓練を受けてきた。学校にいけない 数千人にもおよぶ子どもたちはAO モンゴルが開いている識字教育で学びを受けてから公立学校に進級している。 僻地に住んでいる家族には商業訓練の機会を設けて、融資を通して小さなビジネスをはじめる手助けを行っている。 40,000 冊以上の聖書やキリスト教良書が印刷され配られている。また、新しいキリスト教会がモンゴルやロシアに おいて開拓されている。

　AO モンゴル・ジェネシスのビジョンはすべての社会層に変化を与えてモンゴルを変えることだ。これには次の世 代も含まれている。次世代とは国民の30% を占める14歳以下の世代だ。次世代に対して総合的に働きかけるため に3 つのミニストリーがある。「ライフ・スキル・プログラム」と「ウィンター・キット」そして「GCI（宣教命令 学院）」である。

　次世代に正しい社会的価値観や道徳観を養う必要に応えるべく、AO モンゴルは「ライフ・スキル・プログラム」 といって、子どもたちの人格的成長に集中する教育プログラムを開発した。これに用いられている教材は、子どもた ちの道徳観に大きな影響を及ぼす文化的な課題を考慮した上で学校の先生たちによって作成されており、聖書的な価 値観に立ったものとなっている。2012 年にわずか一校から始まってから、今やナライクやウランバートルの8 つ の学校まで広がり、2､000 名の生徒が授業を受けている。

　今後3 年で7,000 名の生徒がライフ・スキル・プログラムに参加することを目標としてかかげ、彼らが良い人格 や社会的に正しい判断力を養っていけるようにと願っている。実際の授業は、AO のスタッフが週ごとに現地の学 校に出向いている。授業では自尊心や思慮、聞き従うことやゆるすこと、そして感謝や正直であることについて 学んでいる。

　私たちは、保護者と教師向けの研修も開いている。これを通して保護者は子育てにおけるアドバイスを受けること ができ、どのようにして子どもたちに人格教育を行えばよいのかを学んでいる。学校の教師たちはプログラムを完成 させるために教材研究や子どもたちへの継続的な指導の方法などを学んでいる。

　モンゴル教育省や授業を展開している学校やその地域はライフ・スキル・プログラムを好意的に見て支援してくれ ている。しかし、学校制度の規定があり直接的に福音を伝えることはできない。このために、私たちは地域教会と協 力して放課後学校（アフター・スクール）をしている。放課後、子どもたちは教会に来て聖書の価値観についてさら に学ぶことができ、地域に対する働きとして教会は子どもたちに安全な場所を提供して世話をしている。このように することで、福音を伝え、子どもたちだけでなくその保護者たちをもキリストへと導くことができるのだ。

　モンゴルは現在、岐路に立っている。自国の発展と社会が豊かになっていくのに貢献できる子どもたちを育て、こ れから将来を担っていく子どもたちが良い市民となるユニークな機会に恵まれている。子どもたちが育てば、よい 就業者、国民そして保護者となれる。ライフ・スキル・プログラムの成果はすべての社会層に根本的な影響を与える ことができるだろう。

　ウランバートルの学校に通っているバダンサンブさんは11 歳の男の子だ。ライフ・スキル・プログラムに参加す る前はケンカをし、悪い態度で過ごし、授業に集中できずにいた。ライフ・スキル・プログラムで学ぶにつれて、彼 の性格や態度は大きく改善している。彼の集中力が上がるにつれて成績も格段と向上していると彼の担任の先生は話 してくれた。