アジア・アウトリーチ・AR232

「人は心に自分の道を思い巡らす。しかし、その人の歩みを確かなものにするのは主である。」(箴言16:9)

 2020年の始め、私は今年が忙しくなることを期待していました。私がアジア・アウトリーチ・マレーシアのスタッフに なってから半年が経過していました。働きについては学ぶことがまだまだ沢山あり、いくつかの宣教地への旅行も計画する予定だったのです。 私はすでに2019年の終わりにベトナムとネパールを訪問していて、2020年の3月はインドへの宣教旅行を楽しみにしていました。 2020年の2月中旬ごろ、ちょうど中国の新年節のころから、会議や仕事が増えて特に忙しくなりました。カレンダーへの書き込みが増えて、 いくつかの旅行のスケジュールが組まれていったのです。私はメラカ、クアラ・クライ、イポー、ペナンや東海岸における教会指導者や 牧師たちの会議に参加するため旅行をしました。そして、講義のための多くの準備で忙しかったのでした。
 インドへの訪問予定を立てていた時に、新型コロナウイルスによる感染が中国で拡大していることを聞きました。 時間がそう経たないうちに、いくつもの国々で、新型コロナウイルスによる感染が拡大していきました。正体不明で未知なる新型コロナウイルス に対して、有効な治療がまだ見つかっていないこともあって、感染が広がるにつれて、人々はパニックを起こし始めました。 いくつかの国々が国境封鎖を開始するなか、私の国マレーシアでも、感染が確認されました。これをうけて、私は立ち止まり、 インドへの訪問旅行について神様のみこころを求めて祈りました。そしてついに、2020年の3月16日、マレーシア政府は2020年3月18日 からロックダウン(都市封鎖)を行うと発表しました。私は、自分の予定を変えて、今後の予定を立て直していくしかありませんでした。
 3月16日にマレーシア政府は、ロックダウンを行うと宣言し、私はこの大きな変化に対応すべく気を引き締めました。私や妻は、他の人々と同じように、子どもたちのことが特に心配でした。私たちの成人した2人の子、ショーンとジョシュアは私たちのもとから離れて、 クチンとペナンにいたので気がかりだったのです。ショーンは出張の予定を切り上げて、3月17日の午後には帰宅できました。 しかしジョシュアは、奥さんのジャニスと一緒にペナンに残り、友だちの家で過ごすことになりました。 マレーシアの国際便はすべて飛ばなくなりました。ブータンから最近やって来て、私たちのもとでインターンをしていたウガイは、 クアラルンプール国際空港でブータン行きの飛行機を待っていましたが、これもキャンセルされたのです。 私たちは、ウガイを私たちの家に招きました。
 ロックダウンが始まった第一週目は、私たちにとって、新しいことに適応するための期間となりました。 私たちは、セレンバンに住んでいる私の両親に繰り返し電話し、私と私の家族の様子を伝えました。みんな不安だったので、 お互いにつながるために、インターネットを使ってオンラインで写真や料理レシピを見せ合い、互いのために祈っていました。 今まで後回しにしていた家での雑務を積極的に行うことで、私たちは自らを忙しくさせていました。将来の見通しが立たない中でしたが、 神様は日ごとに新しい恵みを与えてくださいました。私と妻はなるべく多くの時間を、神様への礼拝と賛美にささげて、 そのようにして神様のみこころを祈り求めていました。
 このようなことが起こる前、数年にわたって、私は家族よりも仕事を大切にしていた気がします。ロックダウンによって、 私は父親としての責任と役割の大切さが自覚できました。私の人生で優先されていたのは、仕事や主の働きであったので、 父親とは家族を経済的に養う人であれば十分だと考えていました。しかし、この考えが間違っていたことに気づかされたのです。 親戚にさえ会えなくなった今、もっと家族に会いたいと思い始めました。私たちは家族に、過越しの祭りの大切さを伝え、 オンラインで、イェスダサン家の全員が集まって、4月8日に過越しの祭りを祝ったのでした。オンラインでするには、 技術的な問題がいくつかありましたが、なんとか解決できました。そして、すばらしい時間を過ごすことができたのです。 また、私の両親は、結婚記念日をオンラインでお祝いしました。オンラインで行う事には、最初は抵抗があったようですが、 家族全員が「zoom」によって集まることができたのです。多くの笑いや楽しい冗談に満ちあふれた、祝福された時となりました。 本当は、実際に会えていたらよかったのにと思い、悲しくなる瞬間もありましたが、私たちは両親のために祈りました。
 私たちはまた、「zoom」を用いた「世界の見張り人」という世界的なオンライン会議にも参加しました。加えて、オンライ ンを用いた礼拝のための準備もしました。これはまったく新しいことであったので、綿密な計画とともに、技術的な チャレンジと学びが必要となりました。フル・ゴスペル・アソシエーション・チェラスやビクトリー・チャーチとの オンライン講義は成功し、私にとって良い経験となりました。アジア・アウトリーチのメンバーとは会えないでいた ので、互いに励ましが必要でした。そこで私は、「zoom」を用いて、現地で働いているアジア・アウトリーチの働き 人たちとオンライン会議を開催したのです。新型コロナウイルスによる都市封鎖によって、それぞれが孤立していた と言っていました。そのため、オンラインを通して互いにつながることができて良かったと言っていたのです。国に よっては時差を考慮しながらでしたが、神様がすべてのことを順調に進めてくださったことに感謝をささげます。私 は妻とともに、ベトナムにいる働き人たちを励ます目的で、オンラインによる聖書研究と祈りの時を企画しました。
 新型コロナウイルスによる活動制限と神様からいただいた確信によって、私は優先順位を再調整して、新たに焦点 を合わせるべきことが何であるか自覚しました。神様は、私が召命に立てるように、もう一度私を仕えるべき場所に おいてくださったのです。そして、私の人生を回復してくださいました。これによって、私はすぐに、神様をもっと はっきりと仰ぎ見ることになり、神様が私に対してご計画していることや、私の目的を明らかにしてくださったので す。そうして、ほとんど一度に複数の個別のことがらが、うまく調和されたのでした。私は家族の大切さを再確認で きました。また、主が、働き人や教会リーダーに働きかけられて、主のための働きをする前に、個人的な生活におけ る重要な事柄を整理してくださいました。神様が私たちを新たなところに置くために、まず、私たちから神様 のみこころと一致すべく、人生を再調整する機会を与えてくださったのです。
 マレーシアにおける新型コロナウイルスによる活動制限の大きな影響によって、私たちは新しい基準や生活様 式を学び、それを受け入れることになりました。将来的に、私たちの家庭生活や社会生活の様子は大きく変わること になるでしょう。私は神様が、私たちの注意をご自身に向けさせるために、新型コロナウイルスとそれにともな うロックダウンを用いてくださると信じたいと思います。すべてを支配しておられる神様に気づいて欲しいと、神 様が願っておられます。そして、神様との時間を過ごすことで、ご自身を知って欲しいと願っておられるのです。 私たちは、主の奉仕のために忙しくしていたかも知れませんが、主の御前にどうあるべきかがおろそかになって いたのです。重要だと思われることを行ってはいましたが、神様との個人的な関係を犠牲にしていました。神様 が何を語られたいのかを注意深く聞くよりも、忙しく働いていたのです。神様は、私たちの人性にお いて第一であるべきです。今、私たちは神様を以前よりももっと必要としているでしょう。



アジア・アウトリーチ・ジャパン・・・アジア・リポート No.232

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JULY - SEPTEMBER  2020.