アジア・アウトリーチ・AR240
ドリーという男の子に出会った。彼は中国出身のチベット人だ。親から何かを教えてもらったのだろう、 ひれ伏して感謝しているようだった。チベット仏教の教えのもとで育ったチベット人である。彼はイエスの名前を、 一度も聞く機会のないまま、大人になるかもしれない。
中国出身の少数民族であるチベット人は、典型的な未伝部族の一つである。未伝部族の中には、 ほとんどキリスト信仰者がいない。そのため、イエス・キリストの福音を聞く機会は限られていて、 外部からのクリスチャンの助けが必要なのだ。未伝部族とは、文化や宗教的な環境や原因によって、 キリスト教の影響を受けて来なかった民族を指す。キリストの福音に対して抵抗的な国々においては、 クリスチャンに対する迫害があり、権力者たちによって社会から追放されているクリスチャンもいる。
ヨシュア・プロジェクトによれば、ある民族や部族において福音派のクリスチャン人口が2%に満たない場合、 その民族や部族は未伝部族として扱われる。今日、世界には7,000以上の未伝部族がある。それは世界の総人口の40%に相当する。 世界中に遣わされている宣教師の内、わずかに1%がこれらの未伝部族に対して宣教している。 また、教会による世界宣教の資源の内、約3%の経済的支援がこれらの未伝部族に対してささげられている。 世界的な宣教活動の大部分は、すでに福音を聞いたことのある人々のいる地域で行われていることになる。
「この御国の福音は全世界に宣べ伝えられて、
すべての国民にあかしされ、それから、終わりの日が来ます。」(マタイによる福音書24:14)
主は、すべての民族に福音が宣べ伝えられた後に、再び来られると言われた。世界人口の40%を占める未伝部族が、 ほとんど福音を聞く機会がないままでいる中、宣教活動と宣教献金の格差を見過ごすわけにはいかない。 アジア・アウトリーチのもとで新しく始まったマラナタ・プロジェクトは、世界宣教を再調整するきっかけとなることを願っている。
そのためマレーシアの教会が、未伝部族に対する宣教に関わるためのかけ橋となって支援したい、 と考えているのだ。キリスト教会にいる信徒で、ビジネスマンや専門家を新しい宣教師として加え、 世界宣教に対する意識が変わり、宣教が開かれていくことを願っている。 このようにして神様の時とマレーシアにとっての使命を確認したいのだ。
新型コロナウイルス感染拡大によって、多くの国境が閉鎖されたために、宣教師が今までの方法で入国し宣教する機会が失われている。 ただし、職業を用いて宣教するための入国は閉ざされていない。 「使徒の働き」には、使徒パウロやリディアがテント職人として働きながら宣教していたことが記されている。 手に職をもって宣教する方法は、未伝部族に対して有効であると考えられる。マレーシアには多国籍の人々がいるので、 文化や言語適応力が十分に備わっている。それに加えて、マレーシアは未伝部族が含まれている国々と外交的な交渉に長けており、 それらの国々と良い関係にあるために、マレーシアが未伝部族への宣教に関わることは神様のみこころであるとも考えられる。 主が戻って来られるまでに、福音が届けられていない民族に福音を届け、世界宣教の仕上げを行えるならば、それは光栄なことである。
~あかし~
マラナタ、主よ、来てください。
「これらのことをあかしする方がこう言われる。 『しかり。わたしはすぐに来る。』アーメン。
主イエスよ、来てください。」(ヨハネの黙示録22:20)
チベット人の新婦を尋ねたことを今でも鮮明に覚えている。2009年、私たちは短期間の宣教旅行に出ていた。 私たちは野原で行われていたチベットの結婚式を、自動車から見ていた。私たちは彼らのことを全く知らなかったのに、 チベット人たちは私たちをその結婚式に招いて、食事をするようにと、温かく歓迎してくれたのだ。「新郎はどこに いるのか」と尋ねたら、「三日後にやって来る」と言った。後で自動車の中で、「あなたは何をしているのか? 新婦 は新郎がやって来るために、準備をしているのだ」という声をはっきりと聞いた。教会が新婦であり、私たちの主イ エスが新郎であることを私たちは知っていた。新郎がやって来る準備をするのは光栄なことなのである。2010 年に 私たちは主の召しに答え、ある未伝部族の中に住み、そこで主に仕える決心をした。7000 以上もある未伝部族のう ち、チベット人の未伝部族は一部分にすぎない。未伝部族への宣教には、祈る人々や遣わす人々、そして実際に宣教 に行く人々が必要である。この記事を読んでいるあなたにも、何か貢献できることがあるかも知れない。未伝部族が 世界に沢山あることをまず知っていただきたい。それらについて読み、学ぶこともできる。例えば、ヨシュアプロ ジェクトのホームページ(joshuaproject.net)や未伝部族への宣教を扱っている記事(alliancefortheunreached. org)などがある。また、アジア・リポートにも未伝部族の記事が載ることがある。
著者のシャリーン師は夫のリッキーとともに、10 年以上も中国の未伝部族への宣教を続けている。二人は中 国に会社を設立しビジネスを通して宣教をしている。現在マレーシアに帰国しているシャリーン師は、アジア・ アウトリーチのもとでマラナタ・プロジェクトの指揮をしている。マレーシアの教会に未伝部族への宣教につい て紹介し、ビジネスマンや専門家たちが未伝部族への宣教に関われるように支援している。
アジア・アウトリーチ・ジャパン・・・アジア・リポート No.240
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JULY - SEPTEMBER 2022.